人類学とは

人類学(社会 / 文化人類学)とは、人間の多様なあり方を、社会組織、制度、生活様式、思考様式、物質文化などに注目して研究する分野です。
 人類学は、かつて「未開社会」と呼ばれた世界の周辺的な社会に見られる一見奇妙な風習、制度、神話、世界観などが、実際には合理的で深い哲学的な意味を持ち、 自然環境に適応したり社会を維持したりするうえで不可欠な役割を果たしていることを明らかにしてきました。

 人類学の以前の典型的な研究は、都市から遠く離れたアマゾニアやオセアニアの農民や狩猟採集民のコミュニティなどに住み込んで、彼等の社会や文化を理解するといったものでした。
しかし、社会が絶え間なく変化し、新しい文化が常に生まれている現代の世界状況に応じて、人類学の研究もまた変化しています。
今では人類学者は、国際開発の現場や大都市の移民コミュニティ、新しいテクノロジーを生み出そうとしている実験室などで、新たな社会や文化が生成するプロセスを研究しています。

 そのように変わりつつある一方、長期間のフィールドワークに基づき、対象とするものごとをその当事者(このなかには人だけでなく、動物や霊的存在、モノなども含まれます)の視点から捉えようとしたり、さまざまな分野との関連でものごとをトータル(全体的)に捉えようとしたりすること、それによって自らの視点や捉え方などを相対化しようとすることなどは、人類学のエッセンスもしくは醍醐味であり続けています。

人類学研究室の構成

 大阪大学の人類学研究室は、「人類学」「科学技術と文化」という二つのユニットからなっています。

 「人類学」は、人類学の専門分野全体をカバーする広い研究を、「科学技術と文化」はとくに科学技術と社会や文化の関係に注目した研究を行っています。

 ただし、二つの分野は共同で教育にあたり、ゼミや授業、指導などは共同で行っています。 「科学技術と文化」研究分野は、他の大学にはない大阪大学のユニークな特徴です。

大阪大学人類学ならではの『科学技術と文化』ユニットで何を学べるの?

 現代社会では、科学と技術(テクノロジー)はわれわれの生活を左右する重要な存在です。
科学や技術は、かつては合理性に基づく普遍的な知識と考えられており、地域や時代によって変化する社会や文化とは無関係だと考えられてきました。

 しかし、東日本大震災での原発事故やSTAP細胞をめぐる諸問題からも明らかなように、現在では両者の間にさまざまな関係があることが意識されるようになってきました。しかし、その関係はまだまだ明確になっていません。文化や社会構造は科学技術にどのように影響を与えるのでしょうか?新しいテクノロジーは社会に対してどのような影響を与えるのでしょうか?科学者やエンジニアたちは普通の人々とは異なる独自のサブカルチャーを持っているのでしょうか?

 科学技術の人類学は、文化や社会が科学と交差するありさまを、人々の具体的な活動や行為(これを人類学では「実践」と呼びます)に焦点を当てて研究してきました。人類学は、こうした具体的な行為の細部に注目することで、文化が科学に、科学が文化に影響を与え合う双方向的なプロセスを掘り下げて理解しようとするのです。
大阪大学の人類学研究室では、教員と院生たちが次のようなテーマに注目して、科学技術と文化・社会の関係を研究しています。

  • タイ、バンコク周辺地域における洪水防御システムの中における最新テクノロジー、 伝統的な運河網、農村社会の相互作用
  • 再生医療研究におけるiPS細胞研究と日本社会の相互作用、iPS細胞を使った実験室における 科学者の身体感覚、生命観、自然観
  • イノベーションの言説と実践が、日本の地域再生の中で果たす役割
  • 日本のSFにおける人間と機械の関係性およびSF的想像力とロボット工学の相互的な関係
  • 日本の糖尿病治療において薬剤が作り出す医療技術と患者の日常生活の間の相互作用
  • タイにおける土着の機械工業の発展と機械工集団の形成

教員紹介