Date:2019.8

平尾 春菜 さん

2019年3月に大阪大学を卒業後、4月から大学院の修士課程に入学。大阪大学の人類学教室で研究をつうじて学んでいることを聞きました。
人類学を選んだ理由は?
私は、教育学とか心理学とかよりは文化に興味がありました。大阪大学では2年生の後半に専攻を決めます。そのときに、毎週、人間科学部の先生がかわるがわる自分の研究を紹介するという授業があって、その授業を受けて専攻を選びました。その時に、中川先生(2019年3月に阪大を退職)の授業が面白かったから人類学を専攻しました。たしか、トロブリアンド諸島のクラ交換の話をされていたと思います。
どんなことを研究していますか。
徳島の藍染め工房
藍染めをとりあげて、工芸品のモノとしての価値や「真正性」について研究しています。いまの布製品は、ほとんどが機械で作られ、化学染料で染められているのですが、そのなかで藍染めにおいて、植物から作られる天然の染料で染められる工芸品が、他の布製品とはどのように違う価値を見出されているのかということを調べたいと思っています。
卒論では、徳島の藍染め工房でフィールドワークをしました。染め師にインタビューして、どういうものが本物と考えられているかとか、あと工芸品を販売する売り場のディスプレイとか、ホームページでの切り取られ方をみて、どのように工芸品が商品化されているかといったことを調べました。
修論では、「真正性」について、もうちょっと深めて考えていきたいなといった感じです。藍染めをする染め師に注目するのはもちろんですけれど、それを使う人がどういうふうに藍染めをとらえているかとか、工芸品の「真正性」をどのように求めているかとかを視野に入れていきたいです。販売や消費の場、販売される時の宣伝のされ方とかにも焦点を当てていきたいです。
徳島県の工房でのフィールドワークは続けようと思っていますが、藍染めは他の地域でも行われていますし、販売もされていますので、必要があれば、藍染め観光拠点や工芸品を販売している場所にも行きたいと思っています。
人類学研究室はどんなところ?
阪大の学部から大学院に上がってきたのは私を含めて2人だけです。研究室では各々がまったく違う研究をしています。面白いのは、研究テーマとその人の職業や趣味がかぶったりしているところですね。たとえば、看護師の方は「死」について研究するとか、モノマネ好きな人なモノマネについて研究するとか、そういうふうにそれぞれ個性があって楽しいです。自分の研究に直接、関係するわけではなくても、他の人の興味について知ることで世界が広がります。
授業は、レベルも高いし、ついていくのが大変ですけど、ひとつひとつの授業が深いなと思います。学部と比べ、講義よりもディスカッション形式が多くなったので、主体的に物事を考える機会が増えました。
先生は、オープンな感じで、研究について相談したらすぐ相談にのってくれるので、先生に相談しやすい環境は整っていると思います。
人類学を勉強して得られたことは何ですか?
民族誌を読むと、自分が重要だと思っていることと、他の地域や文化に暮らしている人が重要だと思っていることが全然、違うことがわかります。考え方も多種多様だし、その暮らし方とかもさまざまだということが、言葉だけでなく、よりイメージしやすくなりました。
就職活動に役に立つことはありますか?
私は、ディスカッションが苦手なのですけど、授業のなかでグループになって話すと自分の考えていることを言葉にしなければならないので、それが就活のグループディスカッションの練習になっているかなと思います。授業であつかっていることも、それなりに難しいこととか、複雑なこともあったりしますが、それを言葉にすることで、難しいことを言語化する練習になっているのかなと思います。