Date:2015.4

いろいろなトピックや地域について幅広く学ぶこと。それと同時に自分の関心に沿って、深く1つの問題について追求できること。この2つの方向性が人類学の魅力です。

Liv Nyland Krause さん (博士課程)

デンマークやフランスで人類学を学んだあと、ボランティアなどを経て、現在大阪大学人類学研究室で、復興やイノベーションについて研究を深めています。
人類学の魅力はなんですか?
震災で壊れた養殖場。がれきと泥を取り除く作業中
体験して学ぶ「フィールドワーク」という人類学の調査方法に魅力を感じています。私は禅に興味があったので、18歳(高校生)のときに、母国のデンマークから日本に来て、1ヶ月間お寺に住み込んで、禅を体験しました。毎日、座禅をしたり、お坊さんの行事についていったりしました。そのときは、それが「フィールドワーク」という人類学の手法だと知らなかったのですが、一緒に暮らして体験するということが、他の文化を知る、理解する上でとても重要だと思いました。フィールドワークをすると、本を読んだりするだけではわからないことが理解できます。それで、人類学に興味を持ち、大学で専攻しました。人類学の理論や考え方を学ぶと、どう世界を理解するのか、どう世界を見るのかという様々な視点を知ることができます。そうした知識や方法は、学問だけではなく、日常生活、例えば友達と会うとき、家族と話しているとき、旅行に行くとき、仕事をするときなどどんなときでも生かすことができると思います。
修士ではどんなことを研究しましたか?
ボランティアへいく途中(がれき化した村の家々) 宮城県沿岸沿いの村
3.11の地震と津波後の東北地方における「復興イノベーションと地域経済の活性」について修士論文を書きました。大阪大学の修士課程に入学する前、2011年3月に東日本大震災が起きました。地震の直後から、自ら宮城県に行ってボランティアをしました。食べ物、ブランケット、テントなどを運んだりする仕事を手伝いました。その後、たびたび東北に通って、がれきを取り除くなど、ボランティアをしながら、自分の研究テーマと結びつけていきました。もともと、どうやって人々は何もないところから仕事を作り、組織をまとめていくのか、そのような方法をどうやって新しく生み出すのか、に興味があったのです。ボランティアをしながら、人々の復興プロセスについて、修士論文を書き上げることができました。
大阪大学の人類学研究室に来てよかったことは?
魚介加工会社の中。中のがれきを取り除いている。 ランプだけが“壊されず”に残っていた。 イノベーションのシンボルのように見える。
大学院生が出席する院ゼミが好きです。学部生のときは、いろいろな文献やトピックを浅く、広く勉強しますが、院ゼミでは半年や一年かけて1つの本、1つのトピックについて、深く考えることができます。1つの問題にフォーカスして、どんどん深く考えることはとても楽しいです。それに、人類学研究室の先生や学生は、それぞれ異なった地域、異なった研究テーマを持っているので、たくさんインスピレーションを受けることができます。また、研究室内外で、たくさんセミナー、シンポジウム、ワークショップが開かれていて、たくさんの刺激を受けることができます。
また、幅広く学ぶだけではなく、修士論文や博士論文では、自分の関心をどんどん深めることができます。先生がテーマを決めるということはなく、自分の興味にそって自分でテーマを決めて追求できます。
人類学を目指す後輩へのメッセージ
いろいろな人やトピックスからインスピレーションを得ると同時に、自分の興味をどんどん深く追求したい人にはおすすめです。大学の研究室によっては、先生に与えられたテーマをやらなければならないこともあると思いますが、人類学は本当に自分がやりたいことができます。
現在の状況:

Livさんは、スタートアップ企業のコミュニティを取り上げて、イノベーションの世界におけるエコロジカルな想像力(イノベーション・エコシステムなど)に焦点を当てた博士論文を執筆しました。
その後は、大阪大学の文理融合プロジェクトで特任研究員を務めています。