村橋勲
むらはし いさお

内戦、紛争解決、難民、アフリカの製鉄技術、映像人類学

研究課題
ウガンダにおける南スーダン難民の生活戦略と社会ネットワーク
研究関心
東アフリカの紛争と難民、民族誌映画の制作、アフリカ製鉄技術の比較研究
対象地域
エチオピア、南スーダン、ウガンダ
研究内容
本研究の目的は、庇護国における難民の社会的包摂/排除の諸相および難民の生存戦略を分析することである。フィールドワークは、ウガンダの難民村に避難した南スーダン難民を対象にしており、彼らが難民村においてどのように生活を創出、維持しているか、そして故地や都市の南スーダン人とどのようなネットワークを再構築しているかを調査している。私は、2013年から、南スーダンの民族集団ロピット(Lopit)でフィールドワークを行ってきたが、2013年12月から始まった内戦のため、南スーダンへの入国、調査は困難なため、現在は、ウガンダの南スーダン人難民を対象に調査を行っている。南スーダンは22年に及ぶ内戦の後、2011年7月にスーダンからの分離独立を果たした。第二次内戦(1983~2005年)では、スーダン人民解放運動/スーダン人民解放軍(SPLM/SPLA)とスーダン政府との対立に加えてSPLM/A内の分裂も要因となり、戦闘は激化した。その結果、包括的和平合意(CPA)までの22年間に約250万人の犠牲者と500万人以上の国内避難民および難民が生じた。さらに、2013年12月に首都ジュバで発生した銃撃戦から、国内各地で大統領派の政府軍と元副大統領派の反乱軍との間で激しい戦闘が起こり、現在も双方の軍は激しい武力衝突を繰り返している。国連の発表によれば、この戦闘による死者は、数万人、国内避難民と難民は計150万人に達している。  ウガンダは、1960年代から、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ、スーダン、エチオピア、エリトリア、ソマリアなどのアフリカ諸国から多くの難民を受け入れてきた。ウガンダ政府は、1999年から各難民村において、難民に居留地と農地を与え、生活の自立を促す難民自立政策(Self-reliance Strategy)を主導してきた。この政策は、人口密度の少ない地域(国境付近の辺境地帯であることが多い)に難民村を開設し、難民を農村開発のエージェントとして活用するものであり、国連は地域社会への難民の社会統合を進める政策として積極的に評価している。しかし、実際には、難民への支援不足、新規難民の増加による土地不足、森林資源の枯渇などの問題が報告されている。フィールドワークは、ウガンダの難民村において実施している。調査では、まず、長期難民と新規難民それぞれの生活実践を、各難民の生業と経済活動から明らかにする。調査結果に基づいて、難民のフードセキュリティを社会経済的側面から分析することが可能になる。次に、各難民が故地や都市に暮らす南スーダン人と構築する社会ネットワークを調査し、難民村の各コミュニティが創出する連帯、および難民村と都市や故地とを繋ぐネットワークの諸相を解明する。これらの調査の結果から、本研究では、国際機関が称揚するウガンダ政府が進める自立政策(Self-reliance Strategy)を再検証し、難民の生活戦略を考察する。
研究業績
論文
「エチオピア西南部の製鉄技術と鉄器使用」『物質文化』物質文化研究会、第81巻6号、1-20、2006年。

「鍛冶職人から展望する社会-エチオピア西南部における鍛冶職人の生存戦略」『文化人類学』(旧『民族学研究』)日本文化人類学会、第72巻1号、68-94、2007年。

Yamasue, Eiji and Murahashi, Isao
“Traditional Steelmaking in Southwestern Ethiopia: A Metallurgical Analysis.” Nilo-Ethiopian Studies No.14, 1-18, 2010

書籍
「チャラ:他民族との相克と生存戦略」『講座 世界の先住民族 ファースト・ピープルズの現在05サハラ以南アフリカ』福井勝義、竹沢尚一郎、宮脇幸生(編)、147-160、 2008年、明石書店。

書評
Murahashi, Isao
“Ethnography of Pottery Making: Community-Based Technology of Ethiopian Women Potters”, Kaneko Morie. Nilo-Ethiopian Studies No.18, 45-46, 2013
口頭発表

2014年5月31日 「独立後の南スーダンにおけるコンフリクトと地域社会の動向:オーストラリアの南スーダン人ディアスポラへの調査から」平成25年度(卓越)大学院生調査研究助成第二次・第三次成果報告会、大阪大学(大阪)、口頭発表

2014年5月25日 「内戦後の地域社会の社会変化と新たなコンフリクト-南スーダン、ロピットの形成と民族間関係の変化」第51回日本アフリカ学会、京都大学(京都)、ポスター発表。

2014年4月20日 「内戦終結後の南スーダン ロピットにおける民族間、集団内関係 の変化-年齢組、雨の首長そして内戦の影響」、第23回日本ナイル・エチオピア学会、広島市まちづくり市民交流プラザ(広島)、口頭発表。

2013年12月1日 "The Third Forum on “Comprehensive Area Studies on Coexistence and Conflict Resolution Realizing ‘African Potentials’” “Peacebuilding and ‘African Potentials’: Harmonizing Approaches from Above and Below in South Sudan and Beyond”, Juba, Oral Presentation.

2013年4月27日 「南スーダンにおける内戦後のコンフリクトに関する研究」、卓越する大学院拠点形成支援補助金「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」、平成24年度大学院生調査研究助成成果報告会プログラム、大阪大学(大阪)、口頭発表。

2012年4月22日 「ジェンの旅-エチオピア西南部ボディの葬送儀礼」、第21回日本ナイル・エチオピア学会学術大会、京都大学稲盛財団記念館(京都)、映像発表。

2009年4月26日 「エチオピア西南部の製鉄技術に関する冶金学的検証」第18回日本ナイル・エチオピア学会学術大会、総合地球環境学研究所(京都府)、口頭発表。

2005年5月22日 「民族を越える職能集団のネットワーク-エチオピア西南部の鍛冶職人の移住を事例として」、第39会日本文化人類学会研究大会、北海道大学(北海道)、口頭発表。

調査歴
2014年7月~2015年2月 ウガンダ:「南スーダン難民の生業と経済活動に関する調査」
2014年3月 オーストラリア:「南スーダン難民に関する予備調査」
2012年12月~2013年2月、2014年11月~2014年12月 南スーダン:「内戦後の紛争解決と平和構築に関する調査」
2002年11~2003年1月、2003年7月~2004年4月、2004年8月~2004年11月、2005年12月~2006年1月 エチオピア「鍛冶職人の技術と移動に関する調査 」
経歴
1998年3月 京都大学 総合人間学部卒業
2002年4月 京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程入学
2005年3月 京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程卒業、修士号取得
2005年4月 京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士課程入学
2006年3月 京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士課程退学
2006年4月 日本放送協会入局、報道カメラマン勤務
2012年4月 大阪大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程入学
2012年12月 日本放送協会退局
2013年4月(~2015年3月) 日本学術振興会特別研究員(DC2)
研究助成 / 他
平成24年度・平成25年度卓越した大学院拠点形成支援補助金「コンフリクトの人文学 国際研究教育拠点」大学院生調査研究助成(2012年12月~2013年2月、2014年2月~2014年3月)
日本学術振興会特別研究員DC2(2013、2014年度)